弁護士としての独立開業において、「どこに事務所を出すか」は、集客力・経費・ブランディングすべてを左右する最大の意思決定ポイントの一つです。

では、競合に埋もれず、かつニーズも見込める“狙い目エリア”とは、どうやって見つければよいのでしょうか?

ここでは、立地選びに悩む独立弁護士のために、狙い目エリアを見極める具体的な方法を解説します。


1. 「人口密度 × 法律需要」から市場規模を把握する

 まず第一に、その地域の“相談ニーズ”が一定以上あるかを確認する必要があります。

参考になる指標

  • 人口規模(市区町村単位) 目安)人口10万人以上あれば、潜在的な相談ニーズは存在
  • 高齢化率(相続・成年後見の需要予測)
  • 離婚率・婚姻件数(離婚分野を扱うなら)
  • 破産件数・生活保護世帯数(債務整理系)
  • 中小企業数(企業法務系)

データ参照先

  • 各市町村の統計情報
  • e-Stat(政府統計ポータル)
  • 地元の商工会議所や自治体HP

人口だけでなく、「どんな相談が多そうか」を仮説立てすることが大切です。


2. Googleでの「検索ニーズ」から判断する

 次に確認したいのは、Web検索されているかどうか。ネット集客を考えるなら、これが必須です。

無料で使えるツール

  • Googleキーワードプランナー(Google広告に登録すれば利用可)
  • ラッコキーワード(https://related-keywords.com/)
  • Ahrefs・Ubersuggest(有料だが精度高)

チェックすべきキーワード

  • 「〇〇市 離婚弁護士」「〇〇市 相続相談」
  • 「〇〇駅 弁護士」「〇〇市 法律相談」

一定以上の検索ボリュームがあるキーワードが存在すれば、ネット集客による案件獲得が見込めます。

注目点)
「◯◯市 離婚弁護士」月間検索数:80
→ ニッチながらも地域特化型HPで上位を狙える可能性大


3. 弁護士数・競合事務所数の「密度」を調べる

 人口が多く、検索数もあるのに弁護士が少なければ、そこは**“狙い目”**です。

弁護士数の調べ方

  • 日本弁護士連合会の「弁護士白書」
  • 各弁護士会のHP(会員検索で地域絞り込み)
  • Googleマップで「〇〇市 弁護士」と検索

密度の目安

  • 例)弁護士1人あたりの人口
      → 全国平均:約5,000人に1人
      → 地方では10,000人に1人以下の市町村も存在(=狙い目)

競合が少ない地方都市や中核市は、ローカルSEOで圧倒的優位に立てる可能性があります。


4. 地域の「士業インフラ」と連携できるかを見る

 独立直後は、地元の他士業や病院、介護施設、不動産会社との連携が大きな営業ルートになります。

見るべきポイント

  • 市内に司法書士・税理士が一定数いるか
  • 弁護士会支部や相談センターがあるか
  • 地元の商工会、行政書士会などと接点が持ちやすいか

実務的ヒント

  • 「士業の横のつながりが強い街」は、新人でも紹介を得やすく、信頼の蓄積が早い
  • 「士業の数が少なすぎる街」は、逆に孤立しやすく案件獲得に苦労するケースも

5. 賃料・物件事情とのバランスを見る

 当然ながら、どれだけニーズがあっても、毎月のコストが高すぎては意味がありません。

賃料の目安

  • 初年度は月商の10~15%以内
  • 駅近でなければ、駐車場付き物件が望ましい(地方なら特に)

シェアオフィスやレンタルオフィスも視野に

  • 法人登記が可能かどうか
  • 会議室・受付サービスの有無
  • 弁護士が他にも入居しているか(信頼性・紹介の可能性)

6. 実際に“足で稼ぐ”フィールド調査も重要

 最後は、やはり実地調査です。Webの情報だけでは見えないものも多くあります。

見るべきポイント

  • 駅の乗降客数や人の流れ(昼と夜)
  • 商業施設・行政機関の有無
  • ビルの出入りの雰囲気(信頼感を持たせられるか)

狙い目エリアの選定:判断基準のまとめ

観点ポイント内容
人口・ニーズ人口10万人以上、高齢化率・離婚率も参考
検索ニーズ地域+キーワードで月間検索数が一定数ある
弁護士密度弁護士1人あたり人口が高い地域はブルーオーシャン
他士業ネット士業連携・紹介ルートが作りやすいか
賃料バランス月商の10~15%以内に収まるか
実地感覚「ここに相談に来る人が想像できるか」

■まとめ|戦略なき場所選びは、失敗の第一歩

 狙い目の開業地は、「競合が少ない」だけでは不十分です。「人口・ニーズがあるか」「ネットで検索されているか」「士業連携が可能か」「固定費が耐えられるか」など、複数の視点から“勝てる場所”を戦略的に選定しましょう。

弁護士としての独立は、場所選びの時点で大きく差がつきます。

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