
弁護士にとって「いつ独立すべきか?」という問いは、キャリア形成の中で避けて通れない重要な選択です。
特に近年、司法試験合格者の増加や弁護士人口の伸びによって競争が激化する中、「即独(即時独立)」という道に魅力を感じる方もいれば、「一度は勤務してから」と考える方もいるでしょう。
本記事では、即独と勤務後独立を単なる比較ではなく、個人のキャリア戦略・経営戦略の視点から深掘りし、どのような状況・志向にどちらが適しているのかを解説します。
❶| 即独の実態とメリット・デメリット
「即独」──リスクの中にチャンスがある
即独とは、司法修習を終えた直後に、事務所への就職を経ずに開業すること。
この道を選ぶ方の多くは、次のような思考を持っています。
- そもそも雇われるつもりがない(起業志向)
- 働きたい分野がニッチで求人がない(たとえばペット法務、風評被害対策など)
- 時間や場所に縛られずに働きたい(地方移住など)
即独の「成功パターン」
- 修習中からブログ・SNS等で情報発信しており、案件がある程度流れてくる
- 司法試験合格前から士業ネットワークやビジネス人脈を構築していた
- 前職(官庁・企業等)で得た信用・実績を活かせる
- 開業地が競合が少なく、地域ニーズが高い
即独の「失敗パターン」
- 開業直後に収入がゼロで、3か月以内に資金が尽きる
- 実務経験不足で、受けた案件をさばけず信用を失う
- 業務がブラック化(営業・実務・会計・電話対応などすべて一人)
開業してすぐに軌道に乗せるには?
即独を選ぶ場合、「開業後に集客しよう」では遅すぎます。以下のような準備が成功を左右します。
- 司法修習中からブログ・X(旧Twitter)等で情報発信 → 潜在顧客の信頼獲得
- 検索キーワードに対応したコンテンツ制作(SEOの基礎)
- 修習地・地元での人脈形成(他士業、不動産、保険業など)
❷|勤務後独立の実態とメリット・デメリット
「経験と資金を積み上げてから」が基本路線
勤務後独立は、特に以下のようなタイプの弁護士に向いています。
- 自分の専門性・適性を事務所で見極めたい
- 開業リスクを抑え、安定した基盤を作ってから独立したい
- 人脈や紹介ルートを勤務を通じて築きたい
勤務経験が「開業の糧」になる場面
- 顧客対応やクレーム処理のスキル(経験なしでは対応困難)
- 依頼者との信頼構築プロセスの習得
- 裁判官・検察官・書記官との実務的なやりとり
- 契約書レビュー・企業法務・交渉などの高度業務へのアクセス
勤務が“枷”になる可能性もある
- 「事務所のやり方」しか知らず、開業後に柔軟性を欠く
- 特定分野に偏ってしまい、他の業務ができない
- 独立のタイミングを逃してズルズル残る
❸|タイミング判断のための5つの基準
① 実務力:自分は一人で事件を完結できるか?
- 離婚や交通事故、相続など「一人で完結可能」な分野であっても、複数の論点や手続の流れを把握していないと依頼者の信用を失います。
② 資金力:6か月収入ゼロでも生活・運営できるか?
- 生活費+家賃+HP作成費+広告費+業務ソフト利用料…
- 日本政策金融公庫の融資を活用しても、初期投資300万〜500万円は現実的に必要
③ 市場分析:開業エリアで「需要×差別化」が成り立つか?
- 都市部ならSEO・広告競争が激化、地方なら紹介が鍵
- 他士業との提携も視野に入れるべき
④ 戦略性:「なぜ自分がやるのか」が言語化できているか?
- なぜ開業するのか、なぜこの分野なのか、誰にどんな価値を提供するのか?
- 差別化ポイントを明確にしない限り、埋もれて終わる可能性も
⑤ 集客導線:開業時点で「問い合わせが入る仕組み」を持っているか?
- 即独でも、HPやブログ経由の問い合わせが毎月何件かある状態を目指す
- SNS×ローカルメディアの活用、口コミ戦略なども検討
❹ | 独立に必要なのは“タイミング”ではなく“設計図”
開業の成否を分けるのは、「時期」そのものではなく、準備と戦略の有無です。
極論すれば、即独でも勝てる人は勝ち、勤務を経ても失敗する人は失敗します。
以下のようなチェックリストで、自分の現在地を見極めてみてください。
✅ 独立判断のセルフチェック
項目 | チェック |
---|---|
受任から終結までの実務を一人で経験したことがある | □ |
自分の強み・専門分野を説明できる | □ |
開業資金と半年分の生活資金を用意できている | □ |
集客チャネル(ブログ/SNS/紹介など)がある | □ |
なぜ開業するのか、明確な理由を言語化している | □ |
3つ以上チェックがついたら、即独も現実的に検討可能。
2つ以下の場合は、まずは経験と準備を積むことをおすすめします。
■|開業は“キャリアのゴール”ではない
独立開業は、あくまでキャリアの「手段」であり、目的ではありません。
大切なのは、「自分はなぜ独立するのか」「どんな弁護士になりたいのか」という問いに真剣に向き合い、その答えを実現する手段としてのタイミングを選ぶことです。
今のあなたがどの選択をしても、「それが最善だった」と思えるよう、戦略的に行動していきましょう。
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